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​殻ごと食べる珍味、クルミのピクルスがリバイバルの兆し[イギリスの定番品]

2016.8.19



イギリスの田舎の伝統的な昼食と言えば、チェダーやスティルトンといった自家製チーズにチャツネ、田舎パンを添えた「農夫のランチ」が一般的だが、このチーズのお供として遅くとも18世紀の初めにはすでに食べられていた「Pickled Walnuts(クルミのピクルス)」がある。

クルミの実をお酢に漬けたもの?と思ったあなた、当たっていなくもないが、正解でもない。

これは緑色の外皮がついたままの若いクルミを収穫し、外皮に包まれた殻の部分が水分をなくして分離しないうちに丸ごとモルト・ビネガーに漬け込んだもの。しっかり柔らかくなったピクルスをスライスすると、脳ミソの断面図を思わせる模様が浮き上がり……いやはや、見た目どおりの珍味であることは間違いない。


謎のロングセラー





大きめのスーパーマーケットに行くと、1880年に北ロンドンで創業した「Opies / オピーズ」という老舗ブランドのものを手に入れることができる。手に取ると、マリネ液が真っ黒なことに、まず驚く。これは濃い茶色のモルト・ビネガーに漬け込むからというのもあるが、クルミを水に浸して渋出しをした後に、空気に当てて乾かす工程で黒くなっていくからという理由もあるらしい。その後、マリネ液に漬ければ一ヵ月後くらいから食べられる。


スーパーで売られているくらいだから、一般的な食べものなんでしょうと言われると、じつは自信がない。残念ながら私の周りには「クルミ・ピクルスの大ファン」という人がいないのであるが、オピーズのPickled Walnutsのロングセラーぶりを見ると、常食している人は間違いなくいる。珍味だけに、コアなファンなのだろう。チャールズ・ディケンズの小説にも「クルミのピクルスの大ファン」という好事家の話が出てくるくらいだ。


育った家庭で食べる習慣があったかどうかにも大きく関係していると思う。6月に収穫した若いクルミで自家製ピクルスを作る家はまだあり、そんなピクルスが秋になると田舎から送られてくる人もいるかもしれない。そして伝統にのっとり、クリスマス時期に青カビのチーズ、スティルトンと一緒にいただくのである。


薬味としての魅力、再発見





今回、初めて瓶詰めを買って食べてみたが、オピーズのものは大量の砂糖を入れたモルト・ビネガーに漬けているので、確かにチーズに合わせると塩気を中和するチャツネと同様の役目をしてくれるのが分かる。とても柔らかくなっているので、そのまま砕いて薬味代わりに使ってもよさそうだし、肉の煮込み料理に投入する伝統レシピもあるらしい。このマルチな魅力がきっと、リピーターを生み出しているのだろう。


英国料理の良さを見直す最近の動きのなかで、伝統食品にも注目が集まっている。先日行ったガストロパブでは、ウスターソースを加えたチェダーチーズをパンにのせてグリルする伝統の「ウェルシュ・レアビット」に、このクルミのピクルスが添えられていた。もちろん相性はばっちり。食のリバイバルを支える小さな立役者として、今後ますます注目されていく予感がする。


Opies オフィシャルサイト



■著者プロフィール

江國まゆ(えくに・まゆ)

ロンドンを拠点に活動するライター、編集者。出版社勤務を経て、1998年渡英。英系広告代理店にて翻訳ローカライズや日本語コピーライティングを担当し、2009年からフリーランス。趣味の食べ歩きブログが人気となり『歩いてまわる小さなロンドン』(大和書房)を出版。2014年にロンドン発の情報コミュニティeマガジン「あぶそる〜とロンドン」を創刊、編集長として「美食都市ロンドン」の普及にいそしむ。

ホームページ:http://www.ekumayu.com

あぶそる〜とロンドン:http://www.absolute-london.co.uk

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