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4代にわたり“受け継がない”、木村硝子店の伝統。親子ゲンカが100年ブランドをまもる

2017.6.26


創業明治43年。飲食店のプロ向けテーブルウェアメーカーとして知る人ぞ知る存在だった木村硝子店のアイテムは、今ではセレクトショップなどを中心に、一般の人でも目にできるようになりました。


そのきっかけのひとつが木村硝子店の代名詞ともなった、極薄グラス。2代目の木村信行さんが取引先の料亭のために薄く仕上げたビールグラスは、底まで均一の厚みで、職人の技術の粋を感じさせる美しいフォルムと優しい口当たりが評判に。


上の写真は3代目の武史さんが、同モデルをベースにアレンジした「コンパクト」というシリーズのものです。


グッドデザイン・ロングライフデザイン賞を受賞した極薄グラスのほかにも、小松誠氏をデザイナーに迎えた「クランプル」がMOMAパーマネントコレクションとして所蔵されるなど、時代を越えてお客さんだけでなく、各界から高い評価をされてきた木村硝子店。



そこには100年受け継がれる秘伝の書でも隠されているのでは…。ということで、文京区湯島にある木村硝子店のショールームで、3代目の木村武史さんにお話を伺いました。(編集部)


木村が気に入るガラスをつくる


先代が極薄のグラスを始めたというのが昭和22、23年ぐらい。戦後そこまで経っていない時期で、とりあえずモノを作れば売りさばけたような時代です。


実は、薄いグラスというアイデアは僕の父親が考えたというわけではなくて、同業者も同じようなものを作っていたわけですよ。工場もいくつもあってね。


ただ父親はモノの仕上がりに敏感なところがあったみたいで、お客さんに文句を言われたとか、怒られたとか、関係なかったんですよね。


あくまで自分の物差しで気に入ったガラスがつくりたくて「なんでこうやってできないんだよ」なんて工場といつも話してたようです。


そうすると要は木村の気に入ったガラスができるわけですが、父親のこれが好きだとか、嫌だとか、そういう物差しと合う料亭のおやじさんたちが「おっ、これいいじゃねえか」と買ってくれていた。


似たようなガラスは世の中にたくさんあるわけですが、飲食店の人はいつも使っているから、そういう人からしてみると「なんか木村の方がいいよな」という話になったんでしょうね。


"仕事は見て盗め"じゃなく、"見て盗まない"


ただやっぱりね、僕と父親とでは世代が違うわけですよ。だから僕からしてみると、どうしても父親のつくるガラスが「なんだよ、これ」となるわけです。


僕は小さい頃からガラスがなんとなく好きだったんでしょう、大人になったらガラスに関する商売をやろうと思っていました。


子どもの頃から、工場を見に行ったりしていたから、つくり方はひと通りわかっていたし、だから木村硝子店に入ってからも父親からつくり方を教わろうとは思いませんでした。


父親に相談をせずに、さっさと図面を引いて、ワイングラスをつくり始めたわけです。


父親の時代だと型紙というのを切るのですが、それでよく言われましたよ「てめぇ、絵なんて描いてるんじゃない、そんなの商売にならないぞ」なんて。


父親は、僕のつくるワイングラスをとんでもないと思っていて、僕は父のつくるワイングラスをとんでもないと思っている。

人から見たら「なんでそんなにケンカしているの? なんの差があるの?」というぐらいの違いの話ですよ、おそらく。


コンマ数ミリの違いを2年間


結局、僕は最初のワイングラスをつくるのに2年かかりました。大学では経済学部だったから、デザインなんてしたことなかったし、これでいいだろうと思って線を引いてみるけど、ワイングラスにしてみると全然駄目。そしてまた線を引いてみるの繰り返しです。


引いてる線がコンマ数ミリしか違わないわけだから、同業者からしてみると「なにバカなことやってるんだ」という感じでしょうね。


でも自分が気に入らない線を、どうして気に入らないかがわからないわけだから、しょうがない。悩みに悩みました。



この「プラチナ」というラインのワイングラスは発売してから1ヶ月もしないうちに大ヒットしました。売れまくった。


ただもうそれぐらいの時期には自分ではそのデザインが嫌になってしまっていて。でも売れてしまってるから、変えるわけにはいかないしね。しょうがないかって。


「親父のやろうとしていることが、したいんだ」


父親とはしょっちゅうケンカしてたけど、ガラスへのこだわりは似てると思いますよ。先代が目指していたことは、感覚的に体で受け入れていました。


その上で、じゃあその先になにをするのかということが、僕なりにあったわけです。


父親に「おまえ、いったいなにがしてぇんだ?」と言われたことがあるんです。それで僕は「親父のやろうとしていることがしたいんだ」と答えたら、「生意気言うんじゃねぇ」ってまた大ゲンカになりましたけど。


僕は父親の目指しているものの先、延長線上で仕事をするぞって考えていたわけです。


普通を追求することが商売になる


僕は自分ではわからないけど、回りの人からしてみれば木村らしいデザインというのはあるとは思います。


同業者から「木村はなんでこんな普通のガラスばかり売っているのに『おしゃれ』って言われるんだ」と言われたことがあったから「うちの特徴がなにかわかるか?」と返したんです。


そうしたら「いや、特徴ねぇだろう。おたくは」って言うから「うちは特徴がないのが特徴だよ、よく覚えておけよな!」って(笑)。

どういうことかというと、うちのお客さんは普通のものの中に違いが見つかられる人ばかりなんですよ。


「もう木村と仕事したくないよ」って言われるぐらい工場にうるさいことを言って、それでできたちょっとした違いに値をつけている。


でも日本のソムリエはその違いを見分けるわけです。この違いを商売にしている同業者はほとんどいないですよ。


うちはそれが商売になるって知っちゃってるから。同業者にこれを言っても理解されないけど、だからうちは助かってるんです。


「息子さんすごいね」「ふざけんな!」


最近、息子(4代目・木村裕太郎氏)もガラスをつくりはじめてね、それがいきなりすごく売れたんですよ。


みんなに「息子さんすごいね」なんて言われるから頭にきて。「ふざけんな、俺もつくる」なんて(笑)。


息子も僕とは違う、まったく独自のやり方でつくっています。僕にとってそのやり方はバツなんだけど、しょうがないですよね。勝手にやれよ、みたいな。


もし息子が僕の物差しで「お前、いいじゃないか」ということをやっていたら、僕はもう社長を譲ってます。


でも僕にとって息子のやり方はバツだから「まだお前には譲らないぞ、俺は死ぬまで社長だ」と。いつか、寝首かかれるかもわからないけどね(笑)。



文:野垣映二(The World Elements編集部)

写真:河合信幸



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