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博物館に作品が収蔵されるイギリス人家具デザイナーが考える「真に優れたデザイン」とは

2016.12.15


「日本はすばらしい国だね。四国の田舎に住むパートナーのいとこに生活を見せてもらったんだ。伝統工芸では何百年も前の技術がそっくりそのまま今に引き継がれていることに驚きを禁じ得ないよ。イギリスでももちろん古い技術というのは保存されているんだけれど、技術の進化も早くて古いものがそのままの形で残っていることは少ないと言えるね」

日本とイギリスの伝統工芸の違いをこう分析してみせるのは、家具デザイナー&メーカーのGareth Neal(ガレス・ニール)さん。東ロンドンにあるスタジオを拠点に活動している彼は、その代表作がヴィクトリア&アルバート博物館の永久コレクションにもなっている実力派であり、売れっ子でもある。


モノを作ることが大好きだった子ども時代



子どものころから手でモノを作ることが大好きで、もともと陶芸家志望だったのだが、陶芸コースが開講されておらず代わりに木工コースをとった。その後はすぐに家具デザイナーになりたいという夢を抱くようになったという。


今では一点もののアートピースと同様の限定クラフト作品を作るギャラリー付きのアーティストとして、ときにはプライベートやコマーシャル・ベースの注文製作も請負う家具デザイナーとして大活躍している。



そんな彼に率直な質問を投げかけてみた。

「どうやって成功したのかって?」ガレスさんはう〜んと考え込んだ後、こう言葉をはじき出した。

「僕はただ、夢を追いかけただけ。気づくとここにいた」

彼によると、やりたいことをするのに「どこに住みたい」とか「どこで働きたい」とか、つまり「どういう形でそうなりたいのか」というふうに考える必要は、必ずしもないという。

「クリエイティブでありたいという、夢のことを考えているだけでいい。そうすれば、それがいつか形になる。問題は、何を作りたいかなんだ。作品が売れ始めるまで、長い時間がかかったよ。最初の5年くらいは大変だったと思う。でも作品を作り出す歓びが自分とともにある限り、僕の心はいつも満たされていた」

ある日、リサーチを重ねつつも無心になって作り出した作品が、人々の想像をひどくかきたてたのだという。それが「ビジネスの成功へと結びついたターニング・ポイントだったんだ」と振り返る。





数百年前のスタイルに21世紀のテイストを加えて



彼のターニング・ポイントとなった作品である18世紀のアン女王の時代とジョージ王朝時代のデザインにインスパイアされたテーブルとチェスト。


このアン・テーブル&チェアとジョージ・チェストは、今では複数のミュージアムに収蔵されるほどアート性を認められたガレスさんの代表作だ。幾重にも重なる薄い板を削り出したデコレーションは、遠目に見るとまるで異空間にワープしているような不思議な印象を受ける。


このセンセーショナルな作品はミラノのアートショー、ロンドン・デザイン・ウィークや、そのほかにもさまざまなアート・フェアに出品して大きな手応えを得た。そこからビジネスが急速に発展していったそうだ。




「ジョージは僕とアシスタントでコツコツ作ると8週間はかかるけれど、今はウィルトシャーにある会社の助けを借りながら手作業とCNCマシンとのコンビでつくり出している。いわば過去の遺産と最新鋭の技術をミックスさせた作品なんだ。デジタルがスタートしたばかりの時代は、デジタルによるデザインはぎこちなかったけれども、今では先祖帰りしたかのようにより有機的なプロセスを再現できるようになっている。僕はそういった製作の工程にすごく興味があるんだ。そこから生まれたのがジョージとアンなんだよ」


真に優れたデザインは、感受性や純粋さ、誠実さを「統合」することで生まれる



ガレスさんのデザイン哲学を一言で表現するなら、それは「統合」だと言う。


「デザイナーというのは全般的に自分のエゴをデザインに反映しがちだけれど、自分の才能をひけらかしたいという思いがベースにあると、よいデザインを生み出すことは難しい。真に優れたデザインは、感受性や純粋さ、誠実さから生まれるものなんだ。


デザインは、そういったものすべてを統合していく作業だと思う。統合がうまくいくと素晴らしい輝きを放つ。統合というのはモノ作りのキーだと思うよ」


統合するのは精神性だけではない。歴史、環境、技術、人、素材、工程。すべての要素を一つのデザインへと集約していくのがガレスさんのスタイル。伝統を重んじつつも、そこに甘えるのではなく、現代に合う刺激あるかたちをつくり出すのだ。



デザインのアイデアはどこから来るの?との質問に「歴史や機能についてリサーチをする過程でアイデアを得たり、素材の使い方について実験をしていく過程でひらめいたりすることも多い」というガレスさん。

依頼してくるクライアントの話からインスピレーションを得ることもあるそう。

「すべての要素を統合すると、作品の厚みが増し、ストーリーが生まれる。それらを統合していく作業が僕にとってはとても大切なんだ」


伝統を後世に伝える活動から、二酸化炭素排出量を考察するモノ作りへ



「工芸に子ども達が興味を持って取り組みたいと思えるような環境をつくり出し、未来のクラフトへとつなげていくことも自分の役割だと持っている」と話すガレスさん。現在、ブライトン大学でデザインと家具作りを教えている。


「そうしないと伝統が途絶えてしまうからね。このブライトン大学のサポートを受けて、おもしろい実験をしたんだよ。一つの家具を作るのにどのくらいの二酸化炭素排出量を抑えることができるかという実験。マンパワー以外、一切の動力を使わないで作業をするというアイデアでね、これはものすごく僕の興味をとらえたんだ」





まずガレスさんは「一本の木はどのくらいの二酸化炭素を吸収するのか? 」と自問してみた。木は二酸化炭素を吸収して貯めておいてくれるもの。だから木を燃やすと二酸化炭素が出る。もしもその二酸化炭素をずっと貯めておいてくれる身近なオブジェクトを作れば、それは究極の環境保護の証明になりうる!

「それって誰もが喉から手が出るほど欲しがっているものだよね。これは本当にチャレンジだった。まず木の中にはどのくらいの二酸化炭素があるのか、一つの木でできた家具がどのくらいの二酸化炭素を貯めておくことができるのかを計算した。僕自身がその家具を作るに過程で、どのくらいの二酸化炭素をつくり出すのかも」


とにかく工程がとても大切だった。ロンドンから森林地帯までドライブする代わりに、自転車で3日かけて移動したり、「ライフサイクル分析」を徹底し、食べるものも作る過程でなるべく二酸化炭素を発生させていないものを選んだり。そして、カーボン・ネガティブはできなかったものの、カーボン・ニュートラルを実現した。

「ライフサイクル分析を行っていると、生活のあらゆる場面でどのように二酸化炭素と関わっているのかを考えさせられる。食べたり、洗濯したり、移動したりするすべての場面で考えたよ。本当に有意義な実験だった」


誰もそれまでにデザインしたことがないものを作り出す



そんなこだわりの人、ガレスさんの作品をロンドンで見たいと思ったら、高級エリアのメイフェアにあるセレクトショップ「The New Craftsmen」に行くといい。イギリス中のトップクラスの上質クラフト作品に出会えるまたとない空間なのだが、ここでイギリスの昔の家具を現代風に解釈しなおしたガレスさんによる作品「Hamylin Chair / ハムリン・チェア」に触れることができる。



「ハムリン・チェアは、イギリスで昔から使われている椅子を僕なりの考えを加えて現代風に仕上げたもの。オークと革のコンビがいいんだよ」

来年はジョージとアンが誕生して10年目の節目になるため、ジョージの「マークII」を作っているところだという。しかも、ほとんどをCNC マシンで作るという複雑極まりないチャレンジとなるそうだ。

「誰もそれまでにデザインしたことがないものを作り出す作業だからね。いろいろな問題が付随してくる。でも、このチャレンジはやりがい以外の何ものでもないよ」


Gareth Neal(ガレス・ニール)
公式サイト http://garethneal.co.uk

■著者プロフィール
江國まゆ(えくに・まゆ)
ロンドンを拠点に活動するライター、編集者。出版社勤務を経て、1998年渡英。英系広告代理店にて翻訳ローカライズや日本語コピーライティングを担当し、2009年からフリーランス。趣味の食べ歩きブログが人気となり『歩いてまわる小さなロンドン』(大和書房)を出版。2014年にロンドン発の情報コミュニティeマガジン「あぶそる〜とロンドン」を創刊、編集長として「美食都市ロンドン」の普及にいそしむ。
ホームページ:http://www.ekumayu.com
あぶそる〜とロンドン:http://www.absolute-london.co.uk

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